Vリーグの新リーグ構想でチャレンジ男子ファン的に気になるところ。

2016年9月、唐突にプロ化を視野に入れた新たなリーグの構想を発表してから7か月と10日。紆余曲折の末、Vリーグは2018年秋に開幕予定の新リーグについて、概要を発表しました。

【記者会見】Vの構造改革~バレーボールのスポーツビジネス化に向けて~

構想発表時は「いよいよ我々のような地縛霊ファンは切り捨てられるのだな……」と、さめざめと泣きながら文句を言いまくっていたのですが、結局のところ、ファンをどうこうする以前に、各チームへの根回しすら不十分の生煮え段階だったようで、最終的には「全チーム独立採算制」を筆頭とした大方の条件を諦め、試合の開催権をチームに譲渡し、収益を委ねるというところに落ち着きました。

ざっと発表資料を眺めてみて、チャレンジリーグ男子の地縛霊ファンとして気になった点をいくつか指摘したいと思います。

1)そもそもVリーグが、ビジネスの対象として信頼されるのか

機構に長期的なビジョンがない、あったとしても、それを実現するための妥当なプロセスを踏む能力に欠けているのは、今回の構想のごたごたで改めて浮き彫りになりました。
機構のいわば思い付きで、シーズン途中に「今季の下位4チームは3部降格ね」と通告されたり、2部3部の入替戦が復活したと思ったら3年で廃止(予定)になったり、準加盟チームの審査が規約の記述通りに行われなかったり、突然1部リーグの枠を広げるからと引き上げられたりと、こんな風に翻弄される、何が起こるかわからないリーグとチームが、「ビジネス」のパートナーとして認めてもらえるのでしょうか。いつデフォルトやデノミが起きるかわからないような国に投資しますかね?

2)現行チャレンジ1から新S1への急激なステップアップのしんどさ

例えば台湾で電子機器を作ってるお金持ちの企業が「新たにチームを作るからぜひ1部に参戦させてほしい」と言ってきているなら別なのですが、おそらくそんな景気の良い話は当然なくて、となると、男子の新S1リーグを10チーム制にするならば、現行のチャレンジ1から2チーム引き上げる必要が出てきます。
昨季の上位で言えば、大分三好はかつてプレミアに参戦していましたし、富士通も会社が資金を出してくれるなら、昇格自体はできるのかもしれません。VC長野は地元スポンサーの頑張り次第でしょうか。遠征費すらクラウドファンディングでの調達を試みていたこと(しかも集めきれなかったこと)を考えると、現状では苦しいように見えます。
昨季の観客数を見ると、大分三好はホームゲームで1000人弱、富士通は3桁半ばで、VC長野は実数ではなく概数で1200人です。3000人以上収容できる体育館を用意すること自体容易ではないですが、これに見合う人入りにするためには、かなりの労力をかけないといけないでしょう。
また、現在の戦力のでS1に参戦したところで、チャレンジマッチや黒鷲旗の結果に照らせば、プレミアとの差は歴然としており、お客を呼べる魅力的な試合をするのはとても難しい。大規模な補強や練習環境の改善が必要になります。
そうなると、今のチームで保たれているバランスや雰囲気は、残念ながら失われるでしょう。勝つために、チームが一気に様変わりすることを受け入れなければなりません。比較的穏やかに、昇格での変動を乗り切ったチームもありますが、ジェイテクトのような補強の仕方をしないと、成績は伸びないです。個人的な感傷に過ぎませんが、今のチャレンジのチームが、こういった事情で急に激変してしまったら、寂しいな、と思います。

3)公務員チームはどうなるのか

新リーグ構想では、ビジネス化を推進し「チームが自ら稼ぎ、収益を次へと還元」すると明示されています。
この点で引っかかるのが、チャレンジ1所属の警視庁の存在です。公務員チームとしてリーグに参戦しており、組織の性質上、収益性を求めるチーム運営というスキームとは相いれないと考えられます(現在の運営自体、組織内でどういう扱いになっているのかよくわからない)。
発表資料には記載されていませんが、報道によると今まで通り都道府県協会に委託することも可能だそうです。

 これまで機構から各都道府県のバレー協会に譲渡されていた試合の開催権をホームチームに譲渡するが、形態上、営利活動が難しいチームは、都道府県協会やイベント業者に再譲渡して運営を委託することも可能だ。

Vリーグ、将来のプロ化に含み チーム形態に合わせ対応可に見直し/バレー- SANSPO.COM

しかしビジネスの道を歩む以上、将来的には全チームの独立採算運営を目指すのでしょう。いずれ「委託は不可」と突然言い渡され、リーグから追い出される日が来るかもしれない、そんなことを頭の片隅に置きながら、チームを応援することになるのでしょうか。

4)審査をどれくらい厳密にやるつもりなのか

現行のチャレンジは、2シーズン前に改革をしています。06/07シーズンにV1からチャレンジに移行した際、リーグ参加は審査による承認制度となり、下部リーグへの降格は事実上なくなりました。しかし、15/16シーズンに3部リーグ=チャレンジ2を新設し、入替戦を復活させました。これもまた、チームやファンを無視した問題のある進め方だったわけですが、この時機構は、以下のような理由を掲示しています。

競技力が拮抗したチーム同士によるエキサイティングな試合を展開し、競技力の向上と上位リーグへの昇格までのチームづくりの促進が期待されます。

2015/16V・チャレンジリーグ リーグ再編成のお知らせ

当時、チャレンジには12チームが所属していましたが、上位と下位では力の差が大きく開いていました。実力を多少なりとも拮抗させる方法として、チャレンジ1を8チーム制にし、入替戦を導入したことは評価しています。
ところが、新リーグ構想によると、S2は再び審査承認となり、S3との入替戦は行わないとしています。これでは、旧チャレンジと同じ失敗をして、「エキサイティングな試合」が出来なくなってしまう可能性があります。
それを避けるために、ライセンスがチーム運営の諸条件をどこまで規定しているのか不明ですが、少なくとも機構には、厳格な審査をすることが求められます。以前のように、財務の面で耐えられれば(財務が悪化すると再審査の上、最悪の場合、退社勧告をするようです)、練習環境などの都合で著しく戦力が低下しても、2部に居ることを許容するような状態では、ビジネスに適う試合は提供できません。
機構がライバル視しているBリーグには、2部3部間の入替戦制度があり、さらに今季終了後、規則に定められた規模の体育館を確保できなかったチームが、ライセンス不交付となり3部に降格しています(B2ライセンス不交付に関して|東京エクセレンス)。V機構の示した新リーグの参加要件は、2部・3部とも現状の運営規模に比べて過大な設定となっていますが、機構側に自らが示した基準を守る覚悟と用意はあるのでしょうか。

5)チャレンジ2のチームは生き残れるのか

チャレンジリーグ改革の際、準加盟チームに関して以下のように記載しています。

また、準加盟チームの参戦により、チーム数の増加による裾野の拡大と地域密着型のリーグを実現していき、V・プレミアリーグを目指すチームを日本全国に拡充することを期待し、今回の決定となりました。

2015/16V・チャレンジリーグ リーグ再編成のお知らせ

「どんどん準加盟を募って日本中に裾野を広げていくんだ(*^○^*)」のような、わりとノーテンキな方針を示していたわけです。ところが、今回の構想で新S3については「ホームゲームは750人以上収容の体育館で」という条件が示されました。この2年間で何を見たのか、あえて追及しませんが、「いっぱいチームが増えて欲しいけど、貧乏な奴は要らないよ!」という本音をぶちまけているわけです。
繰り返しになりますが、チャレンジにとって新リーグの参加要件、特に体育館の収容数は過大な設定となっています。昨季のチャレンジ2男子の平均観客数は、帳票ベースで1試合あたり230人程度。しかも、概数の会場が多いので、実際に居た人数より膨らんでいる可能性があります(逆に2コート同時進行の日野会場みたいに、チャレ2側コートに座っている客数を数えたらしい「33」なんていう鬼判定の実数も混ざってるんだが)。帳票上700を超えたのは、開幕週の須坂大会(長野Gホームゲーム)のみです。
また、これは検証したわけではなく筆者の体感ベースになりますが、ここ数年、チャレンジは1も2も、全体的に会場が小さくなっており、ホームゲーム共催も増えている印象です。身の丈にあった箱を選ぶ傾向が強くなっていたのではないでしょうか。ビジネス感覚としては適正だと思いますが、機構側としては「そういうしがない合わせ方はイヤ、身の丈をもっと大きくしてよ」ということなんでしょう。
実のところ、新S3については、現チャレンジ2の参加チームをベースに考えているのではなく、(東京五輪バブルで潤っている)新規参入を主軸に据えているのではないか、という気すらしています。「弱小チームを足切りする良い機会だ」とか思ってません? その弱小チームを受け入れてほったらかしにしてたんは誰なん?
個人的には、リーグ参戦に戦力などの面で一定基準を設けることは必要だと考えていますが、機構がそれを疎かにしてきたツケを、チーム側に押し付けて切り捨てるような構図には、納得がいきません。

6)観客にとって何が良くなるのか

資料に書かれているのは、機構からチームへのエールとでも言うか、「君たちの努力で全ての会場が満員になって、活気あふれるVリーグになることを期待している。ミュンヘン金メダリストの嶋岡より」という、運営サイドのざっくり過ぎる理想しか示されていません。「ファンファースト」と掲げられてはいますが、具体的にファンにどのような体験を提供したいのか、という部分には触れていないのです。
チームごとに状況・立場が違いますし、魅力としてアピールすべき部分もそれぞれです。なので機構側が一律に飾り付けを指示するよりも、「各チームの工夫に任せます」とすること自体は間違っていないとは思います。
しかし、「ファンの皆様へ向けて」と明記した上で公表した資料を読んでも、新しいリーグが始まることによって、ファンにとってどんな良いことがあるのか、どんな新しいことに出会えるのか、ぼやっとしたままなのです。「現行リーグではここが制限されていたが、新リーグ移行でこういうことが可能になる」という説明がまるっと省かれていて、どうにもわくわくしない。「ああ、プレミアがS1になって、チャレ1から2チーム引き上げて、3000人なんていう無駄に広いハコ探しをさせるのか。今の人入り考えたらチケットは取りやすくなるかもな」と、冷めた目でしか見られないのです。
個別具体的な話は、今後双方で相談する段階なのかも知れません。けれども、「Vリーグは楽しいことを用意します」というだけの宣言は、選手がアピールポイントを聞かれて「一生懸命頑張っています」と答えるくらい、中身のないものに見えます。来年もう始まるんですよね?

今回の一連の騒動に関して、こちらの記事の指摘が一番しっくりきました。

なぜバレーはバスケに抜かれたのか Vリーグのプロ化、二度目の断念

選手の待遇やチームの収益構造などは、正直なところ「各チームで何とかしといて」程度の扱いで、本丸は「Bリーグみたいになったから体育館貸してよ」と言えるようにしたかった、という話ではないでしょうか。体育館を所有する自治体にとってみれば、利用料を多く払ってくれるイベントの方がありがたいし、企業名より自治体名を広めてくれるチームを優先したいでしょう。旧bjリーグやフットサルFリーグとの競合で何も学ばなかったのだろうか、という気もするのですが。いずれにせよBリーグの開幕で、「オリンピックで金メダルの実績があるバレーボール様」がさほど優遇してもらえないことに気づき、「体育館を借りるためにはどうしたら……そうだ プロ化、しよう」という、発想に至ったのではないかと、今となっては思えてきます。京都は思い付きで行っても楽しめるでしょうけど、プロ化は思い付きでGOサインを出してもそうそう上手くいかないかと。

賛否はさておいて、来年秋には新リーグが始まります。ライセンス審査の過程で、誰かがとても辛い思いをするかもしれません。でも、そういう人を置き去りにしてでも、容赦なく始まってしまうのでしょう。
バレーボールにしか生み出せない感情というのは、きっとあります。一方で、スポーツの感動や興奮は、バレーボールだけのものではない、というのも事実です。S1は3000人、S2は1500人、S3は750人というハコを埋めるために、お客を呼べる個性が何なのか、各チームともじっくり考えてみて欲しいと思います。

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